プライバシー

日本版のwikiには次のような記載が.

個人の私生活に関する事柄(私事)、およびそれが他から隠されており干渉されない状態を要求する権利をいう。

英語版には次のような記載が.

It is the ability of an individual or group to keep their lives and personal affairs out of public view, or to control the flow of information about themselves.

英語版の後半の定義に気をつけたい気がする.「自分自身に関する情報の流通を制御する能力」.

gmailに保存されたメールの内容や自分でブログに欠いた情報はパブリックに公開された情報に等しくて,その情報をネットから消したり,複写や伝達を抑制したりすることは誰にもできない.とりあえず,ネットに晒す内容を自分自身で決められることだけが,「安心」の拠り所.

自分が晒すまいと秘していた情報を第三者が漏洩した場合は,普通に犯罪として取り締まれそう.

クレジットカードの利用をはじめ,社会的な各種のサービスを受けるときには,自分に関する情報の一部をサービス提供元に供出する必要があって,情報の流通に関する事柄は契約に盛り込まれてる.契約違反があれば普通に取り締まれる.たぶんサービス提供元は個人情報の管理に大きなコストを払っていて(漏洩のコストも含む),本当なら個々の顧客ではなく商売上必要な統計値にのみ興味があるはずなので,提供された個人情報から「個人」の部分を濾しとって統計値以外を消去するような工夫がほしいのではないか(もう既にあるのかしらん).

国民総背番号制のような国による強制によって個人情報の提供を余儀なくされる場合は,税金と同じく,有効に使われることや不正に使われないことが監督されないといけない.

今後気をつけるべきは上記のようなことではなくて,個人認識技術やデータマイニングのような,ネット上の情報をかき集めて本人が意図しないような情報を自動的に抽出する技術の出現と,その利用法ではないかしらん.

例えば公道を歩くとき自分の顔(個人情報)を晒していて,でも知り合い以外は自分の顔を見ても自分が誰か認識できない(当たり前).監視カメラシステムが歩行者の映像を撮影していても,現状では,その歩行者の知り合いがその映像を見ない限り,その歩行者が誰かは分からない.でも,昨今の顔認識技術を本気で組み込むと,ネット上に晒されてる顔写真と監視カメラ映像に写ってる顔の自動照合は不可能ではないかもしれず,そうすると,歩行者の歩行履歴とネット上の情報が「自動的に」リンクする.もしくは,ブログを含めネット上の情報を探索して,個々の情報は本人が晒すことを潔しとしていても,それら情報と第三者が晒した情報とを総合して,本人が秘したいと思っていた情報を自動抽出することも可能かもしれず.

情報は一回晒されると,二度と消えない.過去の自分は他人で自分がこれまでいかなる情報をネット上に晒していたかは自分では記憶しきれず,でもテクノロジーは全部を参照することができて.そういう情報の蓄積から例えば下記のニュースのようなアプローチで,社会的に有用な情報を自動「生成」することができるかもしれなくて,でも両刃の剣で.
http://www.asahi.com/national/update/0617/TKY200706160296.html

プライバシーを「自分に関する情報の流通を制御する能力」だとすると,将来現われるかもしれないテクノロジーも織り込んだ上で,自分に関する情報を晒すか否か判断しないといけないかもしれない.晒された情報は二度と消えず,この駄文も将来のテクノロジーは軽々と参照することができるのだし.

「安全・安心」を考えると,自分の実体と強く結びついてる情報の質量が問題.そして情報と実体とを自動的に結びつける技術は自動認識技術で,その技術水準は日進月歩.